1. 基本認識
足許、世界の社会情勢は大きく変化している。この間、ウクライナや中東の情勢を始め、地政学リスクは世界的に高まっており、エネルギー供給やサプライチェーン等に不測の影響が出ることが懸念される状況にある。また、先進国を含め、国内格差の拡大等を踏まえ、自国利益や勢力の拡大を模索する動きは勢いを増している。この他、世界的に人口増加を受けて食料需要が拡大する中、食料安全保障に対する意識も高まっている。こうした下で、国際社会は、冷戦後の国際秩序が安定的に保たれていた状況からは明らかに転換を迎えている。ただし、このような社会情勢の下でも、世界経済は、AI(人工知能)を含め、様々なイノベーションが目覚ましいスピードで進む中、緩やかな成長を続けており、国際機関によれば、先行きも緩やかな成長が続く見通しにある。
日本経済も、当面、海外経済の緩やかな成長を受け、潜在成長率を上回る成長を続ける見込みにあり、そうした下で、鹿児島経済も、総じてみると緩やかな回復を続ける見込みにある。ただし、日本では、世界と異なり人口が減少し、更に高齢化が進んでいる中、人手不足という供給制約により需要を十分に賄えないことが課題となっている。また、世界的に物価の上昇が続く中、ここ数年、事業者にとっては、各種コストの上昇を如何に価格転嫁していくかが重要な課題となっている。この点、鹿児島では、全国を上回るペースで人口減少が進む中、この地の事業者にとって人手不足は全国以上に深刻な課題となっている。また、良いものを安く提供するこの地の風習は、今なお事業者に価格転嫁を慎重にさせる要因となっているようにも見受けられる。
このように、鹿児島を取り巻く課題は様々あるが、他方で、鹿児島は、全国でも有数の魅力や特色を持つ地域でもある。この間、グローバルに需要が高まっている食料品については、恵まれた気候の下、ないものを探す方が難しいほど豊富な種類、そして高い品質の生産物を有しており、生産額ベースの食料自給率も200%を大きく上回り全国トップクラスを誇る。また、離島を含めた豊かな自然や荘厳な歴史、そして本土最南端という特徴的な地理的な位置づけは、観光資源としての更なる活用も十分に考えられる高いポテンシャルを秘めている。
こうした下で、鹿児島経済の今後の振興・発展に向けては、これまで以上に迅速かつ強力に、この地の魅力や特色を活かしつつ、産業の更なる活性化や新たな産業の創出を図ることが重要となる。この点、鹿児島のコンテンツを効果的に発信し、着実に売り込むことで認知度を高める取組みも重要となる。また、産業の活性化や新たな産業の創出に向けては、鹿児島のまちとしての魅力を更に高め、交流人口を増やす取組みも重要となる。そのうえで、先行き人手不足は一段と深刻化する見込みにあることを踏まえると、限られた人員でより効果的に成果を上げるべく、先端技術を含めたICT(情報通信技術)を意欲的に活用しつつ、省力化のための設備投資や人材の効果的な再教育・育成といった労働生産性を高める取組みを進めることも重要となる。
なお、世界では、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)といった国際潮流に沿ったグリーン政策や、DEI(多様性・公平性・包摂性)推進については、一部で巻き戻しの動きもみられる。ただし、足許のようにエネルギー供給への不測の影響が懸念される状況下では、日本、そして鹿児島においては、環境負荷を軽減し、エネルギー効率の良い社会・経済を追求する取組みの必要性は一層高まっている。また、ダイバーシティの推進も、深刻な人手不足の下での労働力の確保・係留はもとより、創造性や柔軟性の発揮を通じた企業価値の向上や、ひいては地域社会の活性化という観点からも、引き続き重要な取組みとなる。
世界の社会・経済情勢が変化する中、これらの取組みを適切に行うためには、各人が果断にその世の中の変化に適応できるよう自らを変革させる姿勢が求められる。そのうえで、鹿児島の総合力を最大限に発揮するためには、各人の変革に向けた「点」の取組みが、この地において効果的に繋がり「線」や「面」の取組みとなるよう、様々な交流や連携を深めることが、今後一層重要になっていく。
以上のような基本認識の下、鹿児島経済同友会は、産業活性化、交流人口創出、教育・人材育成、環境・エネルギー、先端技術研究、ダイバーシティの各委員会を設け、諸課題の検討・提言に引き続き取り組み、鹿児島経済の更なる振興・発展に貢献していく。







