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令和5年度 事業計画

1. 基本認識

ここ数年、世界経済は、「百年に一度」とも呼ぶべき大きなショックに相次いで見舞われてきた。新型コロナウィルス感染症の流行は、これまで当たり前のように享受されていたグローバルな人の往来を遮断し、経済活動の著しい停滞をもたらした。また、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、エネルギーや穀物等の資源価格が急速に上昇し、これに、コロナ禍からの回復過程で生じた部品の調達難や人手不足、いわゆる「供給制約」の影響が加わった結果、欧州や米国では消費者物価の上昇率が10%前後まで達するに至った。もっとも、こうした中でも、民間経済主体の創意工夫や各国当局の対応もあり、国際機関によれば、世界経済はいったん減速するものの、その後は再び成長率が高まっていく見通しにある。

 そのもとで、日本経済は、資源価格上昇の影響などを受けつつも、感染症抑制と経済活動の両立が進む中、持ち直しの動きを続けており、先行きもそうした動きが持続すると考えられる。鹿児島経済もまた、同様の状況にある。振り返れば、宿泊・飲食サービスといった「対面型サービス」や農業・養殖・食品加工など県内外の外食需要に応えるセクターのウェイトが高い鹿児島経済は、新型コロナウィルス感染症のマイナスの影響を、他の地域よりも強く受けてきた。その分だけ、今後の回復が力強く、かつ息の長いものになることを期待したい。

 こうした環境認識に立てば、コロナ禍からの経済活動の再開は、鹿児島の魅力溢れる自然、荘厳な歴史・文化、豊かな食を国内外にアピールし、インバウンドも含めた幅広い需要を取り込む絶好の機会と捉えることができる。そのためには、世界自然遺産に登録された屋久島や奄美大島・徳之島、世界文化遺産に登録された磯地区の旧集成館事業、世界でも類をみない60万人都市に隣接する活火山の桜島、昨年の「第12回全国和牛能力共進会」で頂点を極めた鹿児島黒牛など、質・量ともに豊富なコンテンツを売り込んでいくための取り組みが欠かせない。とくに、今年は、7月に「2023かごしま総文」、10月に「燃ゆる感動かごしま国体・かごしま大会」が開催される予定であり、これを機会に訪れる多くの県外客に鹿児島の魅力を深く理解してもらう(そして、地元に戻って宣伝役になってもらう)ことが重要である。また、その先を見越すと、JR「磯新駅」設置プロジェクトや「スポーツ・コンベンションセンター(総合体育館)」に関する議論など、魅力ある街づくりや人流の活性化に向けた取り組みを着実に進め、魅力的なコンテンツをさらに増やしていく必要がある。

 もっとも、経済活動の再開は、従来から抱えていた構造問題 ― 人口減少、人手不足 ― を再び浮き彫りにしている。鹿児島では、全国よりも早く人口が減少に転じており、先行きの減少テンポも速いと予想されている。この問題は、コロナ禍で経済活動が落ち込んだことにより一旦みえにくくなっていたが、ここにきて急速に顕現化している。これを克服するには、デジタル技術の活用(DX)や省力化投資、人材の再教育(リスキリング)により、できるだけ少人数で同じアウトプットを実現するという、労働生産性の向上を企図した取り組みを着実に進めることが重要になる。本年3月、鹿児島経済同友会は「DXを活用した鹿児島振興に関する提言」を取りまとめた。そこでは、「DXで誰も取り残さない」との共通理念のもと、DXが鹿児島にもたらすメリット・デメリットを検証しつつ、先進事例も紹介しながら、DX時代に相応しく、鹿児島らしい提言を行っている。今後も、DXを活用した鹿児島振興が一日も早く実現するよう、発信と行動を重ねていく。

 また、地球規模の課題としてグローバルに議論が不可逆的・加速度的に進んできている、脱炭素化への対応も急務である。「SDGs(持続可能な開発目標)」や「ESG(環境・社会・企業統治)」といった言葉を聞かない日がないくらい、地域の社会・経済のサステナビリティを高めるための対応が不可欠になっている。議論の射程は、もはや炭素税や電源構成といった国の政策レベルにとどまっておらず、民間ビジネスに対しても、商品のライフサイクルやサプライチェーン全体で脱炭素化、環境負荷の軽減を求める動きが強まっている。地域、業種や企業によって、その影響は区々と考えられるが、課題の所在や大きさ、中長期的な対応のイメージ等について検証し、自らの対応方針を固めておく必要がある。まずはコストが先行することになるが、社会一般の目線が急速に高まってきていることを踏まえると、早めの対応がむしろトータルでみたコストを低減する可能性が高い。逆に、こうしたグローバルな環境変化を商機(チャンス)にできないかといった、前向きな発想も重要だと考えられる。

 さらに、ダイバーシティの推進も重要なテーマである。労働力の確保・繋留や企業イメージの向上という目先の利益だけではなく、創造性や柔軟性の発揮を通じて、やや長い目でみた企業価値の向上にも繋がりうると捉える必要がある。個人の多様性を受容し、活躍の場を広く提供していくことは、ひいては地域社会の活性化にも資すると期待される。

 以上のような認識のもと、鹿児島経済同友会は、産業活性化、鹿児島活性化、交流人口創出、教育・人材育成、環境・エネルギー、先端技術研究、ダイバーシティの各委員会を設け、諸課題の検討・提言に引き続き取り組み、鹿児島経済の振興発展に貢献していく。

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